2013-01-01から1年間の記事一覧

誰が死のうと死ぬまいと

少し酒が回り始めたくらいの時が一番すらすら文章が書けると思うのは私の明るい思い上がりだろうか。私はろくに日記も書いたことのない人間なのだ。最初の数日は続くこともあるんだけれど、それから日付がまばらになって、あれは高校の頃だけど、ふと見開き…

日傘の少女と向日葵と

死にます、死にます、死にます、と、少女が三度つぶやいた。だけど少女は死にません。死なないのではなく、死ねないのです。死にます、というのは、空を飛べることです。自由ということです。 もっと意地悪にしてくれたら、全て投げ捨てることが容易くなるの…

あきちゃん

秋は秋で風流があって、何も夏の名残を掻き集めるばかりの季節でないと、ふとテレビのCM観て思った。枯葉舞う中、例えば七輪の上で魚でも焼いたなら、それこそ秋の醍醐味であろう。 コートを着る季節はいい。衣服の中で、私にとってコートとは、最も好きな部…

今が春なら泣かずに済んだ

今年の夏は 海へ行きました 山へ行きました 都会へ行きました 花火大会へ行きました 夏祭りへ行きました ドライブへ行きました パーティーへ行きました 派手な散財は 人間らしい生き方でしょうか 私にとってそれは あまりにめまぐるしくて そのひとつひとつ…

ランタンの灯に

それははかなむべき事ではありません。 ただ、ふと鼻をかすめただけなのです。 火曜日の朝のことでした。 私はまだ中学生でありました。 火曜日はきらいな授業の多い日でした。 私は火曜日に休むことを、ひとつ習慣のようにしておりました。 朝、懇願して、…

夕陽に追われて

今日は海岸沿いをドライブしました。 大好きなサザンを聴きながら。 そうして夕陽を見ました。 シャボン玉がぼくの目の前を横切りました。 子供が吹いているみたいです。 楽しそうな家族の声がしました。 美味しそうな煙が香って来ました。 それは波の音より…

ぼくたちの失敗

朝は、妙にすがすがしい。 まるで昨日の夜を全て洗い流すように。 ぼくは、だめな男です。飲み会のある度に、反省しています。 友人にも、云われました。 お前は酒を控えろ、と。 気の優しいひとばかりですので、にこにこして、何にも思っていないようで、実…

元気ですか

ぼくは、元気です。それなりに、やっています。 それなりとしか、言いようがありません。 毎日、別段、楽しくもなく、とりわけ、苦しくもなく。 ただ、未来を考えたときの、わけのわからない大きな不安には、押し潰されそうです。ぼくは、ぼくの未来が、一番…

日暮れの雨のはかなさが、やがて聞かれなくなった頃、ぼくの恋するみどりが、頬を染める季節の訪れに、その淵に背を向けて立つぼくは、海の向こうに去ってゆく君の姿がまだ見えるような気がして、陽の沈むのを既に朝のはじまりのように思った。 安物買いの風…

夏祭りの片付け

綿菓子。無邪気な少年が頬張るのも似合う。健気な少女が持つのも絵になる。綿菓子は不思議だ。まるで雲みたい。どこから見たって、雲なのに、それなのに、子供が喜ぶ夢の味。砂糖の魔法。唇に絡みつきそうで、躊躇うけれど、あっけなく溶ける。溶けては物足…

ぼくの心のサナトリウム

仲間がいた頃のことをぼくは時々思い出します。遠い夏の日のことを。 今のぼくは、孤独ではありません。家族とも仲が良いし、友達も幾らかいます。最近、また、友達が増えたんです。それは高校の頃の同級生です。 ぼくが或るきっかけで連絡を寄越したことか…

真冬の異国にて

丁度あの夜は雪が降っていました。スーパーマーケットはアメリカみたいでした。客は少なく、品数は多く、ジュースとジャンクとドラッグを籠に放り込んで、帰り路は一度、信号に引っかかりました。雪の子供が青のチカチカを反射して、そっと死にました。緩い…

夕方の話をさせてください。

夕方の話をさせてください。 私にとって、夕方とは、思い入れのある時間帯なのです。 子供の頃から、好きな時間帯は?と訊かれると、夕方だと答えていた憶えがあります。 朝は、慌ただしいし、夜は、臆病な子供だったし、夕方の、友達と遊んで、爪の間まで砂…

東京の夢を見たぼくは宙返りして雪になった

東京では雪が降ったらしい。というのも、今日は朝から家に籠もりっきりで、それも、ニュースやワイドショーなんて一度も目にしていないから、どんな状況なのかいまいち判っていないんだけれど、ツイッターで、雪だ雪だとつぶやいているひとがあんまりに多い…