2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧

日暮れの雨のはかなさが、やがて聞かれなくなった頃、ぼくの恋するみどりが、頬を染める季節の訪れに、その淵に背を向けて立つぼくは、海の向こうに去ってゆく君の姿がまだ見えるような気がして、陽の沈むのを既に朝のはじまりのように思った。 安物買いの風…

夏祭りの片付け

綿菓子。無邪気な少年が頬張るのも似合う。健気な少女が持つのも絵になる。綿菓子は不思議だ。まるで雲みたい。どこから見たって、雲なのに、それなのに、子供が喜ぶ夢の味。砂糖の魔法。唇に絡みつきそうで、躊躇うけれど、あっけなく溶ける。溶けては物足…

ぼくの心のサナトリウム

仲間がいた頃のことをぼくは時々思い出します。遠い夏の日のことを。 今のぼくは、孤独ではありません。家族とも仲が良いし、友達も幾らかいます。最近、また、友達が増えたんです。それは高校の頃の同級生です。 ぼくが或るきっかけで連絡を寄越したことか…

真冬の異国にて

丁度あの夜は雪が降っていました。スーパーマーケットはアメリカみたいでした。客は少なく、品数は多く、ジュースとジャンクとドラッグを籠に放り込んで、帰り路は一度、信号に引っかかりました。雪の子供が青のチカチカを反射して、そっと死にました。緩い…