この頃ギャルが好きになった

私のように学生時代暗い部屋で過ごしてきた人間にとって、陽の当たる場所にいる人間というものは、それだけで眩しくて見ていられないものである。傍に彼らがいるだけで、その会話の内容や声色にさえ眼をつぶってしまいたくなるし、まして眼を見て話すことな…

電球

急いでもとても間に合わない。 いつだって夜はぼくを待ってくれない。 今日は実は映画を観に行ったんです。 それはぼくのずっと観たかった映画でした。 世間の認めた映画です。 そうしてその帰り道に車の窓から町の灯りが妙にうつくしく光るのを認めたときな…

卒業

東京へ行きたい。 この頃その思いが強くなってきた。 別に東京へ行けば素晴らしい毎日が待っているなんていう夢を持っているわけじゃない。もともと都会より田舎の方が好きだし。この町も好き。問題なく暮せてる。ただあまりに問題がなさすぎて年を重ねてい…

誰が死のうと死ぬまいと

少し酒が回り始めたくらいの時が一番すらすら文章が書けると思うのは私の明るい思い上がりだろうか。私はろくに日記も書いたことのない人間なのだ。最初の数日は続くこともあるんだけれど、それから日付がまばらになって、あれは高校の頃だけど、ふと見開き…

日傘の少女と向日葵と

死にます、死にます、死にます、と、少女が三度つぶやいた。だけど少女は死にません。死なないのではなく、死ねないのです。死にます、というのは、空を飛べることです。自由ということです。 もっと意地悪にしてくれたら、全て投げ捨てることが容易くなるの…

あきちゃん

秋は秋で風流があって、何も夏の名残を掻き集めるばかりの季節でないと、ふとテレビのCM観て思った。枯葉舞う中、例えば七輪の上で魚でも焼いたなら、それこそ秋の醍醐味であろう。 コートを着る季節はいい。衣服の中で、私にとってコートとは、最も好きな部…

今が春なら泣かずに済んだ

今年の夏は 海へ行きました 山へ行きました 都会へ行きました 花火大会へ行きました 夏祭りへ行きました ドライブへ行きました パーティーへ行きました 派手な散財は 人間らしい生き方でしょうか 私にとってそれは あまりにめまぐるしくて そのひとつひとつ…

ランタンの灯に

それははかなむべき事ではありません。 ただ、ふと鼻をかすめただけなのです。 火曜日の朝のことでした。 私はまだ中学生でありました。 火曜日はきらいな授業の多い日でした。 私は火曜日に休むことを、ひとつ習慣のようにしておりました。 朝、懇願して、…

夕陽に追われて

今日は海岸沿いをドライブしました。 大好きなサザンを聴きながら。 そうして夕陽を見ました。 シャボン玉がぼくの目の前を横切りました。 子供が吹いているみたいです。 楽しそうな家族の声がしました。 美味しそうな煙が香って来ました。 それは波の音より…

ぼくたちの失敗

朝は、妙にすがすがしい。 まるで昨日の夜を全て洗い流すように。 ぼくは、だめな男です。飲み会のある度に、反省しています。 友人にも、云われました。 お前は酒を控えろ、と。 気の優しいひとばかりですので、にこにこして、何にも思っていないようで、実…

元気ですか

ぼくは、元気です。それなりに、やっています。 それなりとしか、言いようがありません。 毎日、別段、楽しくもなく、とりわけ、苦しくもなく。 ただ、未来を考えたときの、わけのわからない大きな不安には、押し潰されそうです。ぼくは、ぼくの未来が、一番…

日暮れの雨のはかなさが、やがて聞かれなくなった頃、ぼくの恋するみどりが、頬を染める季節の訪れに、その淵に背を向けて立つぼくは、海の向こうに去ってゆく君の姿がまだ見えるような気がして、陽の沈むのを既に朝のはじまりのように思った。 安物買いの風…

夏祭りの片付け

綿菓子。無邪気な少年が頬張るのも似合う。健気な少女が持つのも絵になる。綿菓子は不思議だ。まるで雲みたい。どこから見たって、雲なのに、それなのに、子供が喜ぶ夢の味。砂糖の魔法。唇に絡みつきそうで、躊躇うけれど、あっけなく溶ける。溶けては物足…

ぼくの心のサナトリウム

仲間がいた頃のことをぼくは時々思い出します。遠い夏の日のことを。 今のぼくは、孤独ではありません。家族とも仲が良いし、友達も幾らかいます。最近、また、友達が増えたんです。それは高校の頃の同級生です。 ぼくが或るきっかけで連絡を寄越したことか…

真冬の異国にて

丁度あの夜は雪が降っていました。スーパーマーケットはアメリカみたいでした。客は少なく、品数は多く、ジュースとジャンクとドラッグを籠に放り込んで、帰り路は一度、信号に引っかかりました。雪の子供が青のチカチカを反射して、そっと死にました。緩い…

夕方の話をさせてください。

夕方の話をさせてください。 私にとって、夕方とは、思い入れのある時間帯なのです。 子供の頃から、好きな時間帯は?と訊かれると、夕方だと答えていた憶えがあります。 朝は、慌ただしいし、夜は、臆病な子供だったし、夕方の、友達と遊んで、爪の間まで砂…

東京の夢を見たぼくは宙返りして雪になった

東京では雪が降ったらしい。というのも、今日は朝から家に籠もりっきりで、それも、ニュースやワイドショーなんて一度も目にしていないから、どんな状況なのかいまいち判っていないんだけれど、ツイッターで、雪だ雪だとつぶやいているひとがあんまりに多い…

バイバイ、2012

今日は2012年最後の日です。 浮かれてるひとも多いだろうね。 年越しなんて、特別な気分がしてたのは、精々、中学生の頃までかな。小学生の頃は、夜更かしなんて知らない健全な少年だったから、家族が「年越しそば食べよう」って、日付の変わるまで起きてる…

Sentimental Christmas

私がまだ、小学生だった頃、雪の降るクリスマスがありました。私の住む町は暖かい場所ですので、雪なんて滅多に降らないんだけれど、降っても淡いもので、積もる景色なんて雪国だけのお話だと思っていたんだけれど、その朝は確かに子犬のように浮かれたもの…

集団心理は渋柿のように口惜しい

横断歩道を渡ろうか、渡るまいかと、戸惑いがちの老婆がひとり。私はそれに気付いて車を停めた。ごく当然である。家族にそれを話すと、称賛されるだろうかと心躍らせていた私の思惑とは裏腹に、家族は怪訝な顔をした。 「危ないねえ。」 「お前みたいなやつ…

もう少年は死にました

私は確かに早朝の、誰一人の足音もない、霧の深い時刻に起き上がって、玄関先で虫除けスプレーを全身に振り、サンダルをつっかけて出掛けていたのでした。 それはまだ私が小学校に通っている時分でした。大人は誰もそんな幼い冒険心に付き合ってはくれません…

青春は足音もなく

男は商店で塩むすびひとつ求めた。男は素っ気ない様子であったが姿格好はみすぼらしく、哀れに思った店員は水をひとつ差し出した。しかし男は、握りしめた小銭をがちゃりと置いて、おむすびひとつ受け取って、店を後にした。喉は渇いていなかったらしい。本…

マンネリズム

生きることは競争であって 私は一丁前にそれに参加しているような気でいました けれどやっぱりだめみたいです なんだかこう凄く神経を使うのです そんな気楽に生きるなんて実は難しくて 大きな山を乗り越えるようなことばかり連続しています しまいにはもう…

みすとたんのつぶやき

私は良くツイッターで140文字ぴったりで呟く癖があるのですが、 せっかく呟いたものだし保管しておきたいやつもあるのでとにかく延々と羅列していきます。 基本的にネガティブですけど、べ、別に病院の中からツイートしてる訳じゃないんだからね!!

禁慾と灰色

うらがえしになって歩きたい。 そうでもしないと、つまらない。 食べ物を消化して、なくなったら、また新しい食べ物を口に運ぶ。そんな風に毎日がくりかえされている。 くりかえさないようにしても結局はくりかえしに抗えずにくりかえしてしまい、こんなにく…

帰り道のお話

ぼろ屋敷の庭にひっそり生えた柿の木に手を伸ばして、その実をひとつ千切ろうかと企んでみたが、生憎私は背が低く、高い所にぽつぽつ付いている柿に手が届かない。 また、長い木の枝を探して来る程の気力もない。ましてや木によじ登るやんちゃな時代はとうに…

趣味について

私は自分に趣味がなく、どれも中途半端だと悔いていたが、趣味なんてそんなもの。突き詰めて世界選手権で優勝するようなものだけが趣味ではない。好きなだけやるから良いのだ。 好きなことを好きなだけやろう。 それら全てが自分であって、決して誰かに披露…

夏日和

ようやく夏らしい天気になった 今年の夏は散々だったよ 大好きな季節がなくなるってのは一番痛い そんな中でもたまに夏らしい日もあるんだよ 今日がそうだった 特に昼間の静けさが好きだ 夏がきたけど、空が夏らしくない気がして仕方が無い 確かに夏の雲はあ…

しあわせのひととき

まるで金曜の終電の様に疲れ果てた私はジリジリと我が家へ向かっていた 絶え間なく襲ってくる頭の痛みを気にし乍ら団地の間を通る 雑踏そして賑やかな町の音 全てを打ち消す蝉時雨 徐々に家に近づく 見慣れた風景が広がる 土の匂いがする畑を抜け 誰もいない…

入道雲、永遠に続くような登り坂、帰り着くとクーラで冷えた部屋が待っていて・・・

あの夏はもう無い 同じ筈の暑さはただ体を火照らせ 刻々と気力を奪って行くだけ 窓から吹き込む夜風を扇風機代わりに ジュース片手にゲーム 40回も夜更かし出来た 近所のみんなで花火 友達呼んで家族旅行 朝から晩までとにかく遊んだ 暇を持て余していたあ…