元気ですか

ぼくは、元気です。それなりに、やっています。
それなりとしか、言いようがありません。
毎日、別段、楽しくもなく、とりわけ、苦しくもなく。
ただ、未来を考えたときの、わけのわからない大きな不安には、押し潰されそうです。ぼくは、ぼくの未来が、一番わからないのです。このまま生きて、どうなるのか、かといって、死ぬ勇気もなく、意味もなく、生きている。ぼくにはもう、夢なんてないし、はっきり言うと、安心より、不安の方が上回っているから、一日、一日、心をすりへらして生きているような感じです。
元気ですか。君の町には、紫陽花が咲いていますか。紫陽花の色は、みんなかなしい。ぼくは、ときどき、ほんの時々、思い出にすがっています。それだけは、どうか、許してください。ぼくには、思い出しかないのだから。
タツムリが、めっきり姿を見せなくなりました。もういなくなってしまったのでしょうか。どこにもいなくなってしまったのでしょうか。まるで、これまでぼくに関わった、全てのひとの心の中から、ぼくのことが消えてしまうように。始めからなかったことのように。
ぼくには、影がない。歩いても、歩いても、ぼくを映し出す光は、むなしいばかりで。歩いても、歩いても、ぼくは歩いていないのとおんなじだ。いつのまにか、ぼくは、思い出、例えば夏の日差しの中で、うだるほどのノスタルジアにやられて、懐古々々の放射能を浴びながら、或る感傷の病の中で死にゆくにちがいない。

Posted by Mist