しあわせのひととき

まるで金曜の終電の様に疲れ果てた私はジリジリと我が家へ向かっていた
絶え間なく襲ってくる頭の痛みを気にし乍ら団地の間を通る
雑踏そして賑やかな町の音
全てを打ち消す蝉時雨
徐々に家に近づく
見慣れた風景が広がる
土の匂いがする畑を抜け
誰もいない山道へと入る
聴こえるのはただ延々と流れ続ける水の音
人生よりも急な坂を覚束無い足取りで上がって行く
懐かしい匂いのする畦道を通り
遠ざかる軽トラをぼんやりと見つめる
朧げに見えて来たのはやがてやって来る夏の姿だった

Posted by Mist